【京都祭事探訪】千年の都に息づく神事と儀礼──月別に紐解く歴史と発祥（2025/10/21 更新）

古来より、日本人は季節の移ろいを神事や仏事に託し、その時々の自然の摂理と向き合ってきました。


千二百年の歴史を持つ古都・京都は、まさにその営みの集積地です。雅やかな平安貴族の行列も、町衆の切実な疫病退散の祈りも、全ては「その季節に何を行うべきか」という古来からの知恵に基づいています。


私は去年の秋、わずか2泊3日の滞在でしたが、京都という街が持つ深遠な魅力にすっかり魅了されてしまいました。一度訪れると、まるで過去の時空間へ誘われるかのような錯覚に陥ります。毎年、季節を変えて訪れたいという願望は募るばかりです。


しかし、真夏の京都の猛暑は、旅の快適さを損なう要因になりかねません。だからこそ、その季節「神事の目的」を知り、旅の時期を吟味することが、京都旅行を完全に楽しみ尽くすための鍵となります。


単に観光地を巡るのではなく、その背景にある歴史や発祥を紐解けば、あなたの京都での散策は、単なる旅から「日本の歴史を味わう精神の旅」へと昇華されるはずです。


この記事では、京都の一年を月ごとに彩る主要な祭事・イベントを紐解き、あなたの京都旅行がさらに深まるための指針を示します。

【インフォグラフィック】京都の年間祭事カレンダー（視覚の旅）

Q1：京都府内で最も有名なお祭りは？歴史とその内容について。

Q2：京都駅周辺で訪れやすい神社仏閣はどこ？

Q3：京都市内で最も人気の観光スポットは？

一年間の神社仏閣イベントカレンダーを随時更新。

1月：新春を寿ぎ、福を呼ぶ祭事（新年の祈り・再生）

「京都ゑびす神社」の由緒・歴史・特色

京都ゑびす神社の創建は、建仁2年（1202年）、臨済宗の開祖である栄西禅師が宋から帰国した際、建仁寺建立にあたり、海の守護神であるゑびす神を勧請（かんじょう）したのが始まりと伝えられます。仏教と神道の習合により、商売繁盛の神として、市井の信仰を集めてきました。


特筆すべきは、9日と10日の「十日ゑびす」の賑わいです。福笹を求めて参拝者が押し寄せ、笹に結びつける吉兆の小宝を選ぶ様は、京都の商都としての活力を象徴します。


また、祇園甲部の舞妓・芸妓による福笹の授与は、祭事に華やぎと雅を添える異彩を放ちます。商売繁盛、家運隆昌を祈願する、新春の希望に満ちた祭事です。

2月：古式に則り、厄災を祓う祭事（厄除け・清浄）

由緒・歴史・特色

節分は季節の変わり目、殊に立春の前日は「鬼門」にあたり、古来、災厄が生じやすいと考えられてきました。起源は平安時代に宮中で行われていた追儺（ついな）の儀式に遡ります。これは、疫病をもたらす鬼を追い払うために行われた古式ゆかしい宮中行事です。


吉田神社：
祭りの異彩は「火炉祭（かろさい）」です。境内に築かれた斎火（いみび）の炉で、古い御札や神具を焼き上げ、清浄な炎で厄を祓います。その炎は立ち上り、神聖な空間を創出します。


壬生寺：
狂言（大念仏狂言）の奉納が行われ、無言劇の形式で鬼を退治する物語を演じ、笑いとともに厄災を祓います。


豆を撒き「鬼は外、福は内」と唱える行為は、追儺の精神が民間に浸透した形であり、清々しい心持ちで春を迎えるための厳粛な準備です。

3月：灯火を捧げ、春の訪れを祝う祭事（涅槃と雅）

由緒・歴史・特色

この祭事は、平成15年（2003年）に始まった、比較的新しい京の夜の風物詩です。しかし、その根底には、古来より神社仏閣で行われてきた「献灯」の精神、すなわち仏様や神様に灯火を捧げ、感謝と祈りを表す行為があります。


東山山麓一帯の寺院、神社、市道が一体となり、約5キロメートルに及ぶ散策路に、約2500基の露地行灯が配置されます。


竹のインスタレーション、生け花の巨大展示、プロジェクションマッピングなど、伝統と現代の美意識が融合した表現が特筆されます。また、清水寺や青蓮院など、普段は拝観できない夜の境内の特別拝観もこの祭事の大きな魅力です。静謐な夜の京都が、幽玄の光に包まれる様は感動的です。

4月：花の精霊を鎮め、厄を避ける祭事（生命の息吹）

由緒・歴史・特色

安良居祭は、約1000年前の平安時代中期に、疫病退散と鎮花を願って始まったとされ、京都三大奇祭の一つに数えられます。春、花が咲き乱れ散る時期は、その花の精霊に誘われて疫病が流行すると信じられていました。この精霊を鎮め、安らぎを祈るのが本祭事の淵源です。


祭りの中心となるのは「花傘」と「踊り子」の巡行です。大傘に桜や椿、柳を飾った花傘を主体とした行列が、太鼓や笛の音に合わせて街を練り歩きます。


特筆すべきは、「花傘の下に入ると一年間無病息災で過ごせる」という信仰です。人々は花傘の下をくぐり、自らの厄を花の精霊に託します。生命の躍動と、それと表裏一体の厄災からの解放を願う、生命力の強い祭事です。

5月：平安の雅を伝える、古式ゆかしい祭事（平安の優雅）

由緒・歴史・特色

葵祭は、京都三大祭りの中でも最も古く、欽明天皇の時代（6世紀中頃）に、五穀豊穣を祈願して始まったとされます。


その起源は、風雨による五穀不作への恐れに端を発しています。平安遷都後は、国家的な祭祀として位置づけられ、『源氏物語』にも描かれるほど、宮廷文化と密接に結びついてきました。


正式名称を「賀茂祭」といい、主役は、平安装束をまとった500名を超える行列「路頭の儀」です。勅使をはじめとする行列の参加者が、衣装や牛車、馬具に至るまで、双葉葵（ふたばあおい）と桂の葉で飾られるのが最大の特色です。


京都御所から下鴨神社を経て上賀茂神社に至る行列は、まるで平安時代の絵巻物が現代によみがえったかのようです。


その優雅で静謐な佇まいは、祭りの熱狂よりも、厳粛な美を追求した宮廷文化の遺風を今に伝えます。

6月：静寂の中、夏の涼を楽しむ行事（浄化と清流）

由緒・歴史・特色

水無月（6月）の晦日に行われる「大祓（おおはらえ）」は、奈良時代には既に存在した儀式であり、半年間のうちに知らず知らずのうちに犯した罪穢（つみけがれ）を清め、残る半年の無病息災を願う神事です。


貴船神社は、水の神を祀る古社であり、清らかな水に身を清める思想と深く結びついています。


社殿前に設けられた「茅の輪（ちのわ）」をくぐるのが特筆すべき内容です。茅の輪をくぐることで、心身の穢れを祓うとされ、参拝者は左回り、右回り、左回りと八の字を描くように輪を通り抜けます。


また、貴船では夏の時期に川床料理が設けられ、自然の水の流れとともに涼を楽しむ文化もこの時期の特色です。祭事と生活文化が一体となり、暑さを避けて清浄を求める京の知恵が伺えます。

7月：熱狂と浄化の極致、日本を代表する祭事（熱狂と鎮魂）

由緒・歴史・特色

祇園祭の淵源は、貞観11年（869年）に、京の都に疫病が蔓延した際、疫病退散を祈願して行われた御霊会（ごりょうえ）に遡ります。


当初は疫神を鎮めるための切実な祈りでしたが、中世以降、山鉾を豪華に飾り立てるようになり、町衆の富と技を競う場へと発展しました。


約一ヶ月にわたって行われるこの祭事の核心は、山鉾巡行と、それに先立つ宵山（よいやま）です。


山鉾巡行：
高さ20メートルを超える鉾が町を練り歩く様は「動く美術館」と称されます。懸装品のタペストリーや装飾品は、日本の工芸技術の粋を集めたものです。


宵山：
巡行前の数日間、町衆が山鉾を飾り、家宝の屏風などを公開する風習は、祇園祭を文化的な祭典へと高めています。疫病を祓うという切実な祈りの精神と、京の芸術性が高揚する祭事です。

8月：精霊を送り、夜空を彩る祭事（祖霊の供養）

由緒・歴史・特色

五山送り火は、お盆の精霊を送るための仏教的な行事が淵源とされます。起源については諸説ありますが、室町時代には既に定着していたと考えられ、弘法大師空海が一字一仏を灯籠に書いて送ったのが始まりという伝説も伝わります。


京都市を囲む五つの山、すなわち東山如意ヶ嶽の「大」、松ヶ崎西山・東山の「妙・法」、西賀茂船山の「船形」、大北山（鷹峯）の「左大文字」、曼荼羅山（嵯峨野）の「鳥居形」に、巨大な火が点されます。


午後8時より順次点火され、夜空に文字や形が浮かび上がる光景は、極めて荘厳かつ幽玄です。


これは単なる花火大会ではなく、ご先祖様の霊を送り届けるという厳粛な鎮魂の儀式であり、京の夏の終わりを告げる象徴的な祭事です。

9月：勅使を迎え、格式を保つ祭事（勅祭と月見）

由緒・歴史・特色

この祭事は、平安時代初期の貞観年間（9世紀）に勅祭、すなわち天皇の使者（勅使）が遣わされる祭りと定められました。


石清水八幡宮は、伊勢神宮に次ぐ第二の宗廟（そうびょう）と位置づけられ、祭事の格式は極めて高くなります。


最も特筆すべきは、深夜に行われる厳粛な神事と、雅な行列です。神社の神霊を、本殿から摂社である頓宮へお移しする神事の最中は、一切の灯火が消され、静寂の中で行われます。


また、勅使の行列は、古式ゆかしい装束を纏い、威儀を正して参進する様は、京都の祭事の中でも特に格調高い古風を保っています。国家の安寧と皇室の繁栄を祈る、伝統的で重厚な祭事です。

10月：歴史を巡り、明治の気概を示す祭事（歴史の再現）

由緒・歴史・特色

時代祭は、明治28年（1895年）、平安遷都1100年を記念して平安神宮が創建されたのを機に始まりました。


比較的新しい祭事ですが、その発祥には、東京遷都により失われた京都の地位を再認識し、京文化の復興を期すという、明治期の強い気概が込められています。


最大の特色は、明治維新から延暦時代（平安京遷都時）までの約1000年間にわたる各時代の風俗を再現した、2000人規模の壮大な行列です。過去の再現に留まらず、各時代の風俗考証が厳密になされており、「生きた歴史風俗博物館」とも称されます。


行列は、明治維新の勇壮な隊列から始まり、時代を遡って延暦時代の王朝絵巻で終わる、逆行の構成を取る点も特筆されます。京の歴史を俯瞰する、絢爛たる文化の祝典です。

11月：火の勢いを借り、神を迎え入れる勇壮な祭事（感謝と美）

由緒・歴史・特色

鞍馬の火祭は、天慶3年（940年）に由岐大明神が都の北の守護神として鞍馬に迎えられた際、里人が松明（たいまつ）を焚いて神を歓待したのが淵源とされます。以来、神社の例祭として続けられており、京都三大奇祭の一つとして知られています。


祭事の異彩は、何と言っても「火」の迫力です。「サイレヤ、サイリョウ！」の勇壮な掛け声とともに、巨大な大松明を担ぎ上げた男たちが、山里の石段や道を練り歩きます。


数メートルの大松明の火の粉が舞い上がる様は、古代のエネルギーと信仰の熱狂を間近に感じさせます。これは火の力をもって神威を高め、神霊を迎え入れるという、素朴で荒々しい信仰の姿を今日に伝える貴重な祭事です。

12月：一年の締めくくりと、新たな準備の祭事（締めくくり）

由緒・歴史・特色

東寺（教王護国寺）の「弘法市」は、宗祖である弘法大師空海の命日である21日を縁日として、平安時代から続く市（いち）が起源です。また、北野天満宮の「天神市」は、祭神である菅原道真公の誕生日と命日（25日）を縁日としています。


「終い（しまい）」とは、その年の最後の縁日を意味し、新たな年を迎える準備の場として定着しました。


これら祭事の特色は、神事・仏事よりも、市としての賑わいにあります。境内や参道には、骨董品、古着、植木、そして正月飾りやしめ縄などの縁起物を扱う露店が数多く立ち並びます。


参拝者は、煤払い（すすはらい）を終え、清々しい気持ちで、新しい年を迎えるための品々を買い求めます。古い年を締めくくり、来たるべき年に備えるという、京の年末の趨向を象徴する生活に根ざした祭事です。

終わりに：祭事が映す京の精神構造

京都の月次祭事を綜覧すると、春の雅、夏の浄化、秋の歴史、冬の静謐という、季節の構造と人の営みが密接に連関していることが明確となります。


この論考を元に、各祭事の文化的、歴史的な背景をさらに深掘りした論考を連載することで、当ブログ「精神遊歩 思考放談」が持つ独自の視座を確立できると確信しております。

【音声解説①】京都の祭り深層：畏れ・顕彰・町衆の力！千年の歴史と信仰が織りなす年中行事の「魂」

京都旅行を徹底的に楽しみ尽くすための京都記事がスタート。今後音声解説や色んな記事を出していけたらと思います。

【音声解説②】京都三大祭から読み解く千年の都の「祈りの構造」と知識が変える旅の深さ

音声解説を追加。京都の地名は独特なので、ところどころ読み方が変になっていたりします。これは生成AIの限界ですね(笑)

私にとって京都は、年に一度は必ず立ち寄りたい「心の故郷」のような場所です。特に、あの荘厳な神社仏閣の境内を和服でゆっくりと散策することに強い憧れを持っています。


去年訪れた際、夏の祇園祭を避ける調整はしましたが、それでも真夏に近い暑さでした。


あの時期の京都市内の暑さは、まるで空気の層そのものが熱を帯びているかのようでした。次の旅では、穏やかな気候の5月（葵祭の頃）や11月（紅葉の季節）を狙って滞在を計画したいと考えています。涼やかな川床（かわどこ）で納涼料理をいただくことへの憧れは尽きません。


この旅を実現するために、私はANAマイレージを意識的に貯めています。ANA一般カード（VISA）で日々の決済を行い、特典航空券で京都へ飛ぶ計画です。


マイルを効率的に使うことができれば、旅費を抑え、その分を京都での拝観料や、念願の和服レンタル、あるいは歴史的な宿での滞在に充てることができます。


このように、旅の目標と、その背景にある日本の歴史や行事への深い理解が結びつくとき、旅行は単なるレジャーではなく、自己を高めるための投資になるのです。

ANA・ANAカード・マイレージ・特典航空券関連記事はこちら。

ANAマイレージ関連記事と京都旅行（特典航空券獲得が目標！）はこれから当ブログの特集記事として更新していきます。


マイレージをコツコツ貯めて、片道だけでもいいから特典航空券で旅行に行けるようになりたいです。もっとマイルを貯めまくって全国あちこち旅行したいです！

• ANAカードとS&P500投資信託：私が『経済的自由』を創造する2つの戦略
• ANAマイレージ可視化革命！Geminiシミュレーターで特典航空券を戦略的に掴む
• ANAカードが夢の旅と人生の質を決める！時間と心の豊かさを最大化する陸マイラーの戦略的行動指南

行事カレンダーを随時更新します！

今回の記事で描写した、日本の歴史を深く味わいながら京都の神社仏閣を楽しむという行為は、単に知識を得るだけではありません。それは、貴方の京都旅行を内側から輝かせる、価値の変換に繋がります。


古来からの行事の「発祥と目的」を意識してその場に立つとき、あなたはもはや観光客ではありません。千年の時を超えて、この都の先人たちが抱いた「祈りの構造」を肌で感じ、自らの体験として昇華する探求者となるのです。


この年間カレンダーは、そのための強力なツールです。京都は、あなたの訪問を待っています。ぜひ、この記事を片手に、日本古来からの行事を楽しむという行動を起こし、旅を通じて新たな価値観を獲得してください。


京の雅と厳粛さが混在する独特の文化は、あなたの人生観に、今までとは異なる豊かな色彩を与えるでしょう。

ここまで記事を読んでいただき、ありがとうございました！